平成22年9月に行われた第32回日本関節運動学的アプローチ(AKA)医学会の理事会において、博田先生が理事長を退任され、会頭に就任されました。その後継の理事長に私が選任され、了承されました。
日本関節運動学的アプローチ(AKA)医学会はAKA-博田法の研究発表と研究促進、進歩普及、会員相互の連絡を目的とする、目的意識の明確な学会です。AKA-博田法を研究するためには技術研修が第一に必要とされ、それゆえに年間数多くの技術研修会が開催されています。AKA-博田法の技術は2007年の「関節運動学的アプローチAKA-博田法第2版」で非常に進化した技術が公開されています。さらに今年は「DVDの第二版」が発行され、従来に比べて習得の困難さが軽減されています。それにともない専門医試験の受験資格も緩和され、より多くの優秀な専門医指導医が輩出されようとしています。
研究発表については学術集会にどんどん症例を報告していただき、それをまとめて他の専門学会に発表していただけるように援助したいと思います。若い先生方が他の学会へAKA-博田法の発表をすれば初めのうちは必ずたたかれるか無視されると思います。それに懲りずに毎年症例を増やして発表していくと必ず理解者が現れ、さらにそれを繰り返すことによってパネルやシンポジウムへのチャンスが巡ってきます。これは他の学会に浸透するための必要条件です。
会員相互の連絡はメールや会報など有用な手段もあります。しかし一番いいのは会員間で個人的なつながりを作ることです。日本AKA医学会は幸いなことに学閥がまったくありません。したがって他の学会のように師弟関係にしばられることはありません。会員が指導医のところにおしかけて話を聞くというのがAKA-博田法を理解するもっとも有用な手段と思います。会員一人だけで孤立しないでください。
AKA-博田法ではいかに博田先生の技術に近づくことができるかとういことが永遠の課題です。そのためには技術の基本を徹底的に守ることが第一の用件で、自己流に陥る危険性を排除できます。一度自己流の“AKA-博田法”にはまってしまうとスランプ状態になり、より難しい症例に全く対応できなくなります。それまで簡単と思えた症例に対してすら困難をおぼえるようになります。これをAKA-博田法の限界と考えてあきらめてしまうことなく、AKA-博田法の技術の基本に戻れば解決できます。このようにAKA-博田法はその技術水準を維持することも大切なのです。
いままでAKA-博田法の技術の難しさを克服できない会員を学会で後押しすることがなかなかむずかしく、そうした会員がAKA-博田法習得をあきらめていたこともたびたびあったようです。AKA-博田法が数ある医療技術の一つで他に変わることのできる技術であればそれもよいでしょう。しかしAKA-博田法に変わりうる医療技術はひとつもないのです。他の医療が全く奏功せず、手術まで受けて悪化した患者を一瞬のうちに治癒させてしまう治療法はAKA-博田法以外にはないのです。このような人類の宝というべき治療法を習得しないであきらめてしまう会員がでないように、微力ながら理事長としての努力をさせていただきたいと思います。
私自身、博田節夫先生からまだ学ぶべきことが山ほどある身でありながら理事長という 重責を引き受けたのは、博田先生は立場上ご自身が開発されたAKA-博田法のすばらしさを自画自賛するわけにはいかなかったはずですが、わたしなら世の中にむかってそのすばらしさを大きな声でいうことができる、その一点だけであります。